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赤々舎

没後30年 木下佳通代  表紙:青

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描くものすべて──

初期作品から、代表作、そして絶筆にいたるまで、その表現の全貌に迫る

「存在とは何か」

神戸に生まれ、関西を拠点に活動した作家、木下 佳通代(きのした・かずよ  1939 ─ 1994)。

木下の作家としてのキャリアは、60 年代、前衛美術の集団「グループ〈位〉」の活動に携わったことから始まります。

70年代には、写真を用いながら、イメージと知覚、物質の関係を考察する作品を数多く手がけました。

「絶対的存在と相対的存在はありながらも、存在はひとつでしかない」という考えを明確に表したその極めて理知的なアプローチは、国内外で高く評価されます。同時代のコンセプチュアル・アートの世界的潮流と呼応し、1981年にはドイツのハイデルベルクで個展を開催しました。

海外での初個展と時を同じくして、木下は作品そのもののコンセプトを変えずに、写真以外の手段で作品制作が可能か試行します。80年代に入ってパステルを用いた作品によって素材と表現の相性を模索した後、再び絵画の制作に回帰し、「存在そのものを自分が画面の上に作ればいい」と考えるに至った木下は、図式的なコンセプトから脱却することに成功します。シリーズの最初の作品に《'82 - CA1》と名付けて以降、アップデートを続ける筆致とともに、画面上の「存在」はたびたびその表情を変えていきます。 こうして、一筆ごと一筆ごと、自らの感覚を鋭く問いながら作り出された絵画は高い緊張感を備えており、彼女の表現の集大成とも呼べるものです。

1990年にがんの告知を受けて以降も、治療法を求めて何度もロサンゼルスを訪れ、現地でも絶えず制作を続けます。94年に神戸で55年の生涯に幕を下ろすまで、再び絵画へ立ち返った1982年以降だけでも、 700点以上の絵画、ドローイングを制作しました。

本書は、活動時期をたどるように 3つの章で構成しています。公開の機会があまりなかったごく初期の作品から、国内外で高く評価された写真作品、そして1982年以降ライフワークとなった絵画作品によって、その活動の全貌を探ります。木下が一貫してテーマとした「存在とは何か」という問いは、現代においても尚、色褪せず強烈に響きます。

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"最初、筆で描いてそれから布で、拭って。この拭っているのは、カンヴァスの平面と絵具を置いた面とが、等価であること。自分の中では、今までどおりだから、二次元の面を等価にしたいという思いがあるから、これをやっているわけです。そういう方法をとりながら、作品そのものが存在となるように。宇宙の星などの全ての存在が神様に創られて、ランダムに見えるんだけど、一定の相対的な秩序で、存在しているんですね。でも、我々から見れば、自然に存在していて、その存在は、物凄く強いんです。そのような存在のひとつにしたい。"

 

 

本書収録「木下佳通代 インタビュー」より抜粋

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本書収録 寄稿:

「私論 ── 木下佳通代のこと」熊田司(美術史家)

「写真とコンセプチュアリズム」 建畠晢(埼玉県立近代美術館館長)

「思考の結晶 ── 木下佳通代の写真と絵画」光田ゆり(多摩美術大学大学院教授、同校アートアーカイヴセンター所長、プーアール舎主宰)

(赤々舎HPより引用)

 

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