PURPLE
熊野淳司 なみいろ
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波は、決して同じ姿を繰り返さない。
風、潮、地形、光──さまざまな自然の作用が重なり合い、
その一瞬だけのかたちを生み出しては消えていく。
熊野淳司は、その絶えず変化する波を、長時間露光によって写し出す。熊野は、海へ入り、波に身を委ね、その内側からシャッターを切る。揺れ動く身体、偶然の運動、そして流れゆく時間までもが像の中へと刻まれ、写真は一瞬を切り取る記録ではなく、時間と身体の経験そのものを宿した存在となる。
撮影の舞台は、熊野が長年サーフィンを続け、自らのルーツとも深く結びつく片瀬・鵠沼海岸。その海は、風景である以前に、身体の記憶が積み重なり、土地の時間が息づく場所でもある。
本作「なみいろ」に写し出されるのは、波がまとっている時間の色であり、海と身体が響き合うことで生まれる、その瞬間だけの色である。自然の力に身を委ね、自らもその一部となることでしか出会えない光景は、私たちに、写真とは単に世界を記録することではなく、世界とともに在ることなのだと静かに語りかける。
尽きることのない波の表情を受け入れ、追い続ける熊野の眼差し。「なみいろ」は、海の無限の表情とともに、写真の在り方の新たな可能性を映し出す一冊となっている。
ーーー
波は沖合で生じた風が重なり合い、うねりとして集積し、やがて岸へと到達する。
その生成過程は常に流動的であり、同一の波が二度と立ち現れることはない。
さらに、岸で砕ける波は、風、天候、潮回り、地形、光などの条件によって、
その姿を刻々と変容させる。
撮影においてはスローシャッターという手法を用いる。
瞬間を固定するのではなく、時間を堆積させるためである。
同時に、露光中、私は観測者として外部に留まるのではなく、海の中で泳ぎ、
波にもまれ、波の内部へと身を委ねる。
その身体の揺らぎや運動は、偶然性を帯びながら像の形成プロセスに
直接組み込まれている。
撮影地は、地元の海である片瀬・鵠沼海岸である。
長年続けているサーフィンのホームポイントであり、代々先祖が暮らしていた
土地で自分と深い関係性を感じるからである。
制作の大きな原動力は二つある。
一つは、海で風や光、波のエネルギーを感じながらシャッターを切ることで、
自然との一体感を強く体感できること。
もう一つは、想像を超える波の姿を目にしたとき、私にしか見せない表情を
知り得たという充足感があることだ。
その表情は無限であるがゆえに、興味が尽きることはないのである。
熊野淳司
ーーー
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