中井菜央『繡』(赤々舎)
「存在」と「結び目」を問う中井菜央のポートレート。
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「光り輝くことでもなく、闇に沈むことでもない、ただそこに在るということ。
私はそれをポートレートにしようと思いました。」
中井菜央は、人がその人としてただ生きて在ることを、写真で表現しようとしてきました。私たちは、自分自身にも人にも意味を重ねて捉えるのが常ですが、「意味」よりも先行し、かつ強くしぶといものとして「個の存在」を表わそうとしたのです。
やがてその眼差しは、人のみならず、物や動植物、風景へと伸びていきます。あらゆるものは時間の中で変化しますが、それは別の存在への転化ではなく、蝶が幼虫、さなぎと姿を変えるように、可変のなかの不変として「個の存在」を捉えるようになりました。
そして、「個の存在」が関わりを結び、ひとつの相貌を呈すること── たとえば森や都市、ある光景のポートレートをもカメラに収めるようになります。
世界はこの無名の関わり、「結び目」によって構成されているということを写真を通して中井は見出し、写真集『繍』は編まれました。
刺繍を施された布、その裏面をめくってみた時の静かな驚きをもって。
" 世界は過去から未来に広がり続ける時間という無地の布に、結び目で連なる『個の存在』という糸が縦横無尽に張り巡らされているようなものです。永遠の広さの布地と、無数の結び目と、無限に交錯する糸。 "
― 出版社説明文より
Art Direction: 町口景
Size:228 × 289mm
Pages: 128 pages
Binding: Hardcover
Published in 2018
Publisher: 赤々舎
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